2019年 第3四半期 リスク・コンプライアンス・監査 採用動向

Morgan McKinleyでは三か月ごとにリスク・コンプライアンス・監査採用市場のマーケット情報をお届けしています。前期の総括、今期の見通しをまとめましたので、どうぞお役立てください。

2019年第3四半期の転職市場の主なトレンドは?

リスク、コンプライアンス、及び監査は金融の中でも採用が活発な部門ですが、ここ数年の水準からすると先期はやや減速気味でした。これまでは新たな規制や制裁、業務改善命令に対応し防衛の第2線、3戦を増強するために業界の内外から人員を採用している状況でしたが、現在は規制対応がひと段落し、各社のコンプライアンス部門は高度な専門知識を欠く「新人」を抱えてやや肥満体質になっています。

2019年7-9月期に目立ったのは第2線、第3線に詳しいベテランを採用し、部署全体の底上げを図る動きです。増員の場合もあれば、既存のチームメンバーのリプレイスという形をとる場合もあります。このため、全体の求人件数は減っているものの、特殊な知識や経験を求める案件は増加傾向にあります。

HR Recruitment Trends

最も需要が高かったスキルは?

コンプライアンス部門では、先期同様金融犯罪の対応強化が採用の焦点になっていますが、先期はアドバイザリーコンプライアンスやサーベイランス・スペシャリストといった求人も見られました。2019年前半は今まで日本にはなかったコンプライアンス・テスティングという職種でも様々な募集がありました。当局対応を任せられるコンプライアンス人材も安定した需要があり、特に外資系企業では金融庁と良好な関係を築きつつ、海外オフィスと連携してグローバル・イニシアチブも進められる人材を求めています。

リスクマネジメント部門においては、市場リスク及びオペリスクではあまり動きがありませんでした。信用リスクは日系企業でも外資系でも引き続き一定程度の求人が出ています。テクノロジー・リスクは昨今注目の分野ですが、国内で採用を行っているのは主に日系の金融機関です。これは多くの企業が本社所在地において第2線を強化しているためで、外資系企業は海外でチーム作りを進めています。日系金融機関は更に、リスク全体を俯瞰し、全社的な分析に基づいて経営陣や金融庁に報告する「コーポレートリスク」人材も採用しています。

IT監査の採用案件も業界全体で見られました。更に監査においては、改善のために先端技術やプロセスを使いこなそうという動きが加速しており、このため外資系を中心にビジネス知識だけでなくデータアナリティクスの知識・経験を持つ人材を登用してチームの底上げを図る企業が増えています。

転職市場において需要と供給が釣り合わず、スキルギャップが大きい分野は?

各社が部署としてのレベルアップを目指す中、前述した全ての分野で高度な専門知識を持つ人材が不足しています。

コンプライアンスでは、アドバイザリー・スペシャリストが大きく不足しています。日本ではもともとニッチな分野のため、コンプライアンス内の別チームや、ミドル・バックオフィスなどから採用を進めざるを得ない場合もあります。また、ビジネス知識や内部統制意識があり、英語・日本語が堪能でデータアナリティクスの知見を持つ監査プロフェッショナルも高需要です。

一部日系の金融機関は世界的なトレンドを踏まえてAML(アンチ・マネローンダリング)チームを立ち上げたり増強しようとしていますが、金融犯罪規制の素養があるジュニア人材のサーチは難航し、企業が求める理想と人材市場の現実のギャップが明らかになりました。

優秀な人材を惹きつけるために、企業ではどんな努力をしていますか?

ここ数年の第2線・第3線では、当局が求める要件に従い必要な人員を確保するため、他部署からの人材でも市場平均を上回る年収を提示する傾向が続いていました。しかし今は昨年ほどの上乗せは見られず、金銭的報酬によるタレントアトラクションは非常に専門性が高いポジションや求めるスキルを全て持っている場合などに限られています。

代わりに各社が取り組んでいるのが採用プロセスの効率化です。1~2回の面接で内定に至ったケースも複数ありました。「時は金なり」と言いますが、今年は意思決定が速い企業ほど、優秀な人材の獲得に成功しています。

2019年第4四半期の転職市場の見通しは?

2019年10-12月期も、上述したトレンドが続くと思われます。年の瀬に向かう時期は採用案件が落ち込むのが普通ですが、ここ数年の金融業界では年末まで積極的な採用活動が続いています。各社の意思決定者と意見を交わした限りでは、2019年も同じ展開になりそうです。採用枠は年末まで有効、というような時間的制約が設けられている場合も多く、一度ヘッドカウントが取り消されると再び承認を得るのは難しいという現実もあります。

また、上述した分野で理想の人材をまだ獲得できていない企業もあり、これらの案件も引き続き動いていくでしょう。

新しい動きとしては、保険会社がコンプライアンスや監査部門の増強に乗り出していることが挙げられます。銀行・証券で一定の成果をおさめた金融庁が保険業界に目を向け始めているからです。銀行・証券が繰り広げている人材争奪戦に保険会社も参入し、今後は競争がさらに激しくなる可能性があります。

そしてもう一つ、金融人材の新しい、魅力的な受け皿となっているのがフィンテック企業です。「躍進」と呼べるほどの勢いは(まだ)ありませんが、支払ソリューションなどにおいてたくさんの新興企業が登場しています。これらの企業では、コンプライアンスは立上げと共に必要となる必須ポジションで、次いで監査、リスクと採用が続きます。

2019年 第三四半期 リスク・コンプライアンス・監査 採用動向

Steven Howden's picture
マネージャー | 銀行&金融 紹介部門
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