金融オペレーションの現在と未来

この10年で金融のオペレーションは大きく変わりました。コストカットや効率化を追求した結果、オペレーションでは新しい環境に適応し、新たなスキルを身に着けることが求められています。

2018年、金融オペレーションの転職市場は活況でした。ここでは、2018年のデータをご紹介しつつ、2019年の展望についても考えてみたいと思います。

2018年は、前年比で求人数が38%増加しました。金融危機以降オペレーションの求人数は全体として減少傾向にありましたので、これは非常に大きな変化です。一年の推移をみると、1-3月期に年間求人数の22%、4-6月期に25%、6-9月期に29%、10‐12月期に24%ときれいに分布しており、需要が安定していたことがわかります。中でも、通常採用が落ち込む第4四半期にも多くの求人が寄せられたことは注目に値します。市況が暗転する前に確保した予算を使い切ろうという各社のマネージャーの心理が影響していると思われます。

全体としてはジュニアレベルの案件が多く、経験1~4年程度で伸びしろが期待でき、長期的に会社に貢献してくれそうな人材を求める企業が目立ちました。近年日本の転職市場では(ジュニア層は特に)売り手が強く、採用条件について妥協を迫られたマネージャーも少なくありません。バックオフィスからミドルオフィスに移ったケースや、その逆のケースもありましたし、金融ベンダーやコンサルティング会社から内定を得た方もいました。プロダクト関連の知識や経験が浅い候補者を採用した会社もあります。ジュニアレベルではこのように、ハードスキルよりもソフトスキルが重視される傾向があります。コミュニケ―ション能力やモチベーション、会社に長期的に貢献できそうかどうかといった点が、特定のプロダクトのオペレ―ション経験よりも優先されるのです。英語には “Hire for personality, train for skill” という表現がありますが、昨年は各社がこれを忠実に実践した年だったといえるでしょう。

私も以前証券のミドルオフィスに勤めていましたが、当時はプロダクト、ファンクション、ITスキルの全てを満たす候補者しか選考に進めませんでした。最近はスキル面では部分的にしか適合しなくても、上述したようにソフトスキルやポテンシャルが評価されて採用に至る候補者が増えており、大きな変化を感じます。実際、全てのスキルを備えた候補者がいたとして、前職と全く同じ職務内容で成長を期待できるのか、モチベーションを保てるのか?同じ仕事ならそもそもなぜ転職しようと思ったのか?と突き詰めていけば、経験や知識のみを追求するのが必ずしも正道とは限りません。

さて長期的なトレンドとしては、今後ITとオペレーションがぐっと近づいていくことが予想されます。昨今のテクノロジーの進化を見れば当然のことでしょう。既にオペレーションとITの「橋渡し」ができる、ITに強い人材を求めるマネージャーはたくさんいます。今のところITとオペレーションではまだ業務に隔たりがあり、純粋なIT人材をオペレーションに迎えることは難しいでしょう。こうした人材はフロントからバックの業務フローやポストトレード・プロセスについての知識が欠けているからです。また、オペレーション出身者がITに転身することは更にハードルが高いと思われます。しかし長期的には、この二つの部署の距離はどんどん縮まっていくのではないでしょうか。

それでは、2019年現在金融各社がタレント・アトラクションやリテンションの面で最も苦労している点はなんでしょうか。それは、他業界との競争だと思います。15年前、20年前と比べて金融業界イコール「かっこいい」というイメージが薄れてきています。近年人気の就職先といえば、魅力的な仕事や柔軟な勤務制度を整えたGAFAのようなIT企業や、フィンテック企業です。一流の人材であれば、金融業界にこだわらなくてもグローバルなキャリアを実現し、やりがいのある仕事をさせてくれる会社がたくさんあるのです。これまで金融業界はワークライフバランスがよくないというハンデを抱えつつも、高額な報酬ややりがいのある仕事、国際的に活躍するチャンスなどのメリットで優秀な人材を惹きつけてきました。しかしその専売特許が失われた以上、有能なプロフェッショナルを金融にだけ囲っておくのは難しいでしょう。

売り手市場において採用企業が抱える今、一つの課題は選考プロセスの短縮です。複数の内定を獲得する候補者も多い中で、内定までの日数が長い企業はそれだけで不利になるといえます。もちろん、社内で調整が必要な場合もあるでしょう。それでも、候補者にきちんと進捗を伝え、連絡を欠かさないだけでも気持ちが切れてしまうことを防げます。売り手市場ではまた、企業側が会社の魅力をアピールし、他社との差別化を図ることが大切です。採用サイドが強い立場にある、買い手市場とは大きく異なる点と言えます。

では、2019年上期の転職市場はどうなのか、また今後の見通しはどうなのか?生憎、グローバル市場が混乱しているため各社は対応に追われ、昨年と比べると採用に慎重になっています。候補者側も、経済が長期的に労働市場にどのような影響を及ぼすか、ひとまず見守っているように見受けられます。とはいえ、実力の底上げを図りたいチームや、チェンジメーカーとして活躍できる人材を求める部署など、日系・外資系問わずおもしろい案件も出ています。2019年もビジネスにとっての付加価値が高い人材、効率化や内部統制強化に強い人材、優れたクライアントサービスを提供できる人材は依然として高い需要があります。

2019年の転職市場の動向についてもっと詳しく知りたい方、転職に興味がある方は是非お気軽にご連絡ください。

Tobias Berg's picture
コンサルタント| 銀行&金融 紹介部門
tberg@morganmckinley.co.jp

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