転職とカウンターオファー ~ その時どうする? ~

田崎 愛莉 20 Feb 2019

初めての転職を決断後、上司からのカウンターオファー(引留めのための昇給の約束など)によって現職に留まることを決めた方から「やはり転職をしたい」というご相談を受けることがあります。

これは珍しいケースではなく、過去にも多数の転職希望者がカウンターオファーを受け入れて、同じような結末をたどっているのを見てきました。

まず、カウンターオファーの本当の意味をご存知ですか?もともとは契約交渉の場面で使われていた言葉です。売り手側から提示された価格や納期などの条件に買い手側が満足しない場合、条件を修正して買いたいと申し込みを行うことを意味しています。私どもの業界では、転職を希望する従業員に対して、企業からよりよい条件を提示し引き留めることを指します。

実は今日も6か月前にサポートさせて頂いた転職希望者の方から電話を受けました。何となく内容は予想されたのですが、やはり、開口一番「あれほど後悔するけどいいのかと忠告されたことが現実となってしまいました。まだ半年しかたっていないのですが、あの時にきちんと辞めておけばよかったと今、本当に後悔しています。」とおっしゃっていました。

私が担当している業界(金融・オペレーション)の方は働き方、環境、チームメンバーや上司との人間関係が大きな転職理由になることが多く、昇給がメジャーな転職理由ではないことから、カウンターオファーの内容も給与アップというよりも残業の軽減など目に見えない部分での改善を上司から約束されることが多々あります。

前述のケースも、ワークライフバランスの改善を理由に転職活動をしていたため、上司に退職の話を打ち明けた際、異動や就労時間の短縮などの改善を提案されました。また、今まで築き上げてきた職場での立場や人間関係があることからこの方は会社に留まることを決めました。「一時的なワークライフバランスの改善もあり短期的には満足していたのですが、結局のところ異動の話も気づくとなくなっていて、就労環境改善の話もやはり時間が経つにつれ、前と変わるどころか悪化していきました。」とのこと。

カウンターオファーはこのように職場環境の改善を提示され、それを受け入れたにも関わらず、改善を実感することができず、もう一度エージェントに転職のご相談に来られるという、非効率なパターンと化してしまう場合が多々あります。

ただし、逆に言い換えれば待遇面やタイトルのステップアップが主な転職理由である場合に限り、カウンターオファーが悪いとは言い切れません。

その場合に気を付けておきたいことは、現雇用主からのカウンターオファーが、内定先のオファーと比較して明らかに良く、本当に満足のいく条件であること。また、カウンターオファーの内容を書面で提示してもらうようにすることです。書面での提示を断られた場合はそのカウンターオファーが一時的な措置ではないかと疑いましょう。

転職はとても勇気のいることです。また、一度辞めると決めても上司から「君ほど優秀な人材を失いたくない。給与を上げるから辞めないでほしい」などと言われると、ついつい断りづらくて会社に留まってしまう気持ちもよく理解できます。

しかし、これは経験則上言えることなのですが、こうした甘言やいきなりの昇給を受けて良かったと手放しに喜べるケースはほとんどありません。カウンターオファーを受け入れ、会社にとどまった方たちの中に6か月後、1年後に、「あの時やめておけばよかった。」と感じ、再度転職を検討される方も多々おられます。退職願を提出した後にカウンターオファーがあっても、自分はそれだけ価値のある人材だったと受け取るに留めて、丁寧に、かつ確固たる態度を持って断るべきでしょう。

もしそのような状況になったら、以下の質問を自分に問いかけてみて下さい。

  • 企業があなたを引き留めようとしている本当の理由は何か?
  • 本当に自分のことを考えてくれてのことなのか、単に企業の利益や都合のためなのか?
  • 辞表を出したから急に給料を増やすということは、今まで仕事に見合う対価を受け取っていなかったのか?
  • そもそもお給料だけが理由で転職しようとしたのか?それとも他にも考えるところがあって転職しようとしたのか?
  • ワークライフバランス、社内の人間関係は本当に今すぐ改善されるのか?そもそも上司がそのような権限をもっているのか?
  • 毎年の給与見直し時期がきたら、次はどのようなオファーがされると思うか?
  • 上司が自分の代わりの人材を探すまでの暫定措置かもしれないとは考えられないか?

ここで理解していただきたいのは、人材市場が売り手市場であるということ。ベビーブームのあとの少子化などが原因で、ここ数年はさらに顕著に人材不足を感じております。優秀な求職者の方こそ、これをチャンスと捉え、積極的にステップアップを求めることは間違ったことではありません。カウンターオファーはそういう優秀な人材がいなくなってしまうのを惜しむが故の反応かもしれません。もう一度、企業がしていることが従業員のためなのか、それとも企業側の利益や都合のための一時的な措置なのかを自分自身で見極めることがとても重要です。

担当者として転職希望者の方々から「やはりきちんと忠告を聞いておけばよかった。今はとても後悔している。」という電話を受けるのはつらいものです。口で言うのは簡単で決して易しい決断ではないことも十分承知しています。しかし、後悔をしてまた転職活動を一から始めるのは皆さんの時間を無駄にしてしまうことを心に留めておいていただければと思います。

最後に、カウンターオファーを受け、会社に留まった際に考えられるリスクをあげておきます。

  • 辞表を出してすぐに取り下げたら、会社への忠誠心や決断力を疑われないだろうか?
  • 一回でも辞めようとした人材を信頼してもらえるか?
  • 上司や同僚との間に溝はできてしまわないか?
  • 同僚内で士気の低下が生じないか?
  • 自分自身のモチベーションに影響はないか?
  • 昇格審査のときに一度辞表を出したことが影響しないだろうか?
  • 業績が悪化した場合に退職勧奨の対象となってしまわないか?
  • カウンターオファーを受けても結局は半年以内に辞めるケースが多い中、自分だけは違うと言い切れるか?

辞表を提出する前には是非とも考えに考え抜いて、一度辞めると決めたら初志貫徹することが何より大切だと思います。

モーガンマッキンリーはあなたのキャリアパートナーです。転職の際にはいつでもお気軽にご相談ください。
 

Airi Tasaki's picture
コンサルタント | 銀行&金融 紹介部門
atasaki@morganmckinley.co.jp

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