政治の世界に転身したバンカー達
金融業界にとって、政治は身近なものになりつつあります。 ここ20年のトレンドとしては、2001年の自民党小泉政権の誕生、2009年の民主党政権誕生を節目に政治の世界に転身したバンカーが多いようです。
4月21日に統一地方選挙が全国で実施されることもあり、4月は久しぶりに政治を意識する機会がありました。ヘッドハンターとしてお付き合いさせて頂いている金融業界にとっても、政治は身近なものになりつつあります。
当方の印象では、リーマンショック以降から金融業界出身の政治家が目立つようになってきました。なかには取引先だった方が当選されたケースもあり、より個人的に関心を持つようになりました。
7月21日には3年ぶりの参議院選挙が予定されています。今年も政治の世界にチャレンジする金融業界の候補者が多くいます。どんな顔ぶれが当選するかはわかりませんが、バンカーが参議院を占める割合は増えると思われます。
参議院選挙の仕組みに関して
JPモルガン出身の中西健治参議院議員の説明を基にポイントをまとめてみました。
(中西けんじ公式ホームページ より引用)
参議院議員の役割:「時代や雰囲気に流されない慎重な議論を行う」という役割
任期:6年「議院の継続性を保つ」「国会の機能を空白化」させないことを目的に3年ごとに半数を改選
解散:なし
定員:248名(124名ずつ改選)
選挙区:148名(74名ずつ改選)
比例代表:100名(50名ずつ改選)
参議院選挙は衆議院選挙と違って「選挙区」と「比例代表」が各々独立しています。1人の有権者が「選挙区」「比例代表」別々に2回の投票を行います。
では、衆議院議員と比較してみましょう。こちらも、JPモルガン出身の中西健治参議院議員の説明を基にポイントをまとめてみました。
(中西けんじ公式ホームページ より引用)
衆議院議員の役割:「その時々の国民の意見を反映させる」という役割
任期:4年
解散:あり
定員:475名
選挙区:295名
比例代表:180名
(衆議院では選挙区と比例代表の重複立候補ができます。)
では、具体的にどの金融機関出身のバンカーが政治の世界で活躍されているのでしょうか。政治の世界に転身したバンカー達の事例をご紹介致します。(順不同、敬称略)
現役で参議院もしくは衆議院に在籍する方を対象にリストアップしました。
大塚耕平
- 政党:国民民主党
- 参議院議員(現在3期目)
- 選挙区:愛知県
- 初当選:2001年
- 国民民主党 共同代表
- 日本銀行出身(現在の金融市場局、金融機構局、信用機構局を中心に勤務)
小倉將信
- 政党:自由民主党
- 衆議院議員(現在3期目)
- 選挙区:愛知県
- 初当選:2012年
- 総務大臣政務官
- 日本銀行出身(経済調査や国際金融業務に携わる )
塩崎恭久
- 政党:自由民主党
- 衆議院議員(現在8期目)
- 選挙区:愛媛1区
- 初当選:1993年
- 厚生労働大臣
- 日本銀行出身
津村 啓介
- 政党:国民民主党
- 衆議院議員(現在6期目)
- 選挙区:比例代表、中国
- 初当選:2003年
- 国民民主党 副代表
- 日本銀行出身
落合貴之
- 政党:立憲民主党
- 衆議院議員(現在2期目)
- 選挙区:東京6区
- 初当選:2014年
- 三井住友銀行出身
小田原潔
- 政党:自由民主党
- 衆議院議員(現在3期目)
- 選挙区:東京21区
- 初当選:2012年
- 外務大臣政務官
- モルガンスタンレー出身(富士銀行、メリルリンチ、ゴールドマンサックスを経てモルガンスタンレーに勤務。マネージングディレクターを務める)
近藤和也
- 政党:国民民主党
- 衆議院議員(現在2期目)
- 選挙区:比例代表、北陸信越
- 初当選:2009年
- 野村證券出身(津支店、仙台支店、大阪支店に勤務)
勝俣孝明
- 政党:自由民主党
- 衆議院議員(現在3期目)
- 選挙区:静岡6区
- 初当選:2012年
- スルガ銀行出身
岸田文雄
- 政党:自由民主党
- 衆議院議員(現在9期目)
- 選挙区:広島1区
- 初当選:1993年
- 自由民主党政調会長
- 日本長期信用銀行出身
高木かおり
- 政党:日本維新の会
- 参議院議員(現在1期目)
- 選挙区:大阪府
- 初当選:2016年
- 三菱信託銀行出身
藤巻健史
- 政党:日本維新の会
- 参議院議員(現在1期目)
- 選挙区:全国比例区
- 初当選:2013年
- 三井信託銀行を経てモルガン銀行出身
- 為替トレーダーとして、著名
中西佑介
- 政党:自由民主党
- 参議院議員(現在2期目)
- 選挙区:徳島、高知
- 初当選:2010年
- UFJ銀行出身(東京・本郷、日本橋にて法人取引を担当)
佐藤ゆかり
- 政党:自由民主党
- 衆議院議員(現在2期目)
- 選挙区:大阪11区
- 初当選:2005年
- クレディスイス証券出身(日興シティグループ、JPモルガンを経てクレディスイスに勤務。チーフエコノミスト兼経済調査部長を務める)
岡本三成
- 政党:公明党
- 衆議院議員(現在3期目)
- 選挙区:比例代表、北関東
- 初当選:2012年
- ゴールドマンサックス出身(執行役員を務める)
中西健治
- 政党:自由民主党
- 参議院議員(現在2期目)
- 選挙区:神奈川
- 初当選:2010年
- JPモルガン出身(債券本部長、取締役副社長などを歴任)
ご紹介しただけでも、以下の金融機関の出身者がいます。(在籍時の旧名称を含む)
日本銀行、三井住友銀行、富士銀行、メリルリンチ、ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー、野村證券 、スルガ銀行、日本長期信用銀行、三菱信託銀行、UFJ銀行、日興シティグループ、JPモルガン及びクレディスイス 。
各金融機関の概要
日本銀行 : 物価の安定と金融システムの安定を目的とする、日本の中央銀行
三井住友銀行:メガバンク3行の一角、三井銀行と住友銀行が母体
富士銀行:旧都市銀行の一角、現在のみずほ銀行
メリルリンチ:米系投資銀行でバルジブラケットの一角、バンク・オブ・アメリカの子会社
ゴールドマンサックス:米系投資銀行でバルジブラケットの一角、銀行系列には属していない
モルガンスタンレー:米系投資銀行でバルジブラケットの一角、三菱UFJグループが資本参加
野村證券: 国内最大手投資銀行、銀行系列には属していない
スルガ銀行:静岡県を拠点とする、地方銀行
日本長期信用銀行:金融債を発行していた特殊銀行、現在の新生銀行
三菱信託銀行:大手信託銀行、現在の三菱UFJ信託銀行
三井信託銀行:大手信託銀行、現在の三井住友信託銀行
モルガン銀行:大手信託銀行、現在のJPモルガン・チェース信託銀行
UFJ銀行:旧都市銀行の一角の三和銀行と東海銀行が合併して誕生、現在の三菱UFJ銀行
日興シティグループ:日興證券とシティグループの合弁会社、現在合弁は解消された
JPモルガン:米系投資銀行でバルジブラケットの一角、銀行系列
クレディスイス:欧州系投資銀行でバルジブラケットの一角、銀行系列
国政に転じたバンカーの職種に関して
中央銀行における経済調査や国際金融業務、メガバンク支店における営業業務、地方銀行支店における営業業務、大手証券支店における営業業務、外資系銀行為替トレーダー、外資系投資銀行における投資銀行業務(IBD)、外資系投資銀行におけるエコノミスト、外資系投資銀行における債券トレーディング業務など、バンカー時代の職種に関しては多岐にわたっており、特定の職業が特に有利というわけでは無さそうです。
今年の参議院選挙では、金融業界出身者はどのような顔ぶれになるのでしょうか。政治の世界に転身するバンカー達の動向に要注目です。
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