仕事辞典:金融コンプライアンス(前編)

ダンカン・ギルバート September 30, 2019目安: 1分

金融機関のコンプライアンスってどんな仕事?会社の中での立ち位置は?キャリアとしての将来性は?そんな疑問をお持ちの方は是非ご一読ください!

今回は、初心者向けにコンプライアンスのいろはを解説します。前編ではコンプライアンスの定義、金融におけるコンプライアンス部門の発展、そしてキャリアとしての将来性・安定性をご紹介します。
後編では、コンプライアンス部門の今後の展望、コンプライアンス向きの性格の分析、そしてデメリットをお届けします。

【前編】

1. コンプライアンスとは?

コンプライアンスとは、会社が守るべき規制や法律、ポリシーに従って運営されるようにチェックや指導を行う部署です。社内で統一したプラクティスやプロセス、倫理的観点から定めた方針なども対象となります。

2. 金融業界におけるコンプライアンスとその発展

昔は金融業界でコンプライアンスといえば、切れ者が集まったダイナミックな収益部門の足を引っ張る「無能な社内警察官」というイメージでした。映画『マネー・ゲーム』(原題:Boiler Room)には、荒稼ぎをするトレーダーたちが会社に一人しかいないコンプライアンスオフィサーを馬鹿にする描写があり、フィクションならではの誇張もありますが非常に印象的です。

しかし、2008年の世界金融危機を境にこのイメージは大きく変わりました。最近のメディアではむしろフロントオフィスが悪役として描かれることが増えているのではないでしょうか(映画ならば『マネーショート 華麗なる逆転』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』など)。金融業界は徐々に規制を強化し、国・地域単位でも、グローバルレベルでも複雑な規制が幾重にも巡らされました。ボルカ―ルール、ドッドフランク、MiFIDなどの新たな法規制はいずれもコンプライアンス(の欠如)を非常に重く見ています。世界各地の規制当局は、超大手の金融機関にも、不正行為の対価として躊躇うことなく多額の罰金と厳しい制裁を課しており、サブプライムローンに関する一部の訴訟は10年以上たった今でもまだ続いています。公判によって各社の収益(とボーナスプール)が侵食されたばかりでなく、業界内や顧客からの信用にも大きな傷がつく結果となりました。大小さまざまなプレイヤーがシェアを争う今の市場は顧客側の選択肢も豊富で、信用は言うまでもなくかけがえのないものです。

この結果、防衛強化を目指す金融機関においてはコンプライアンス部門の注目度が高まり、以前とは比べ物にならないほどの予算がつぎ込まれています。コンプライアンスはより大きな、より重要な部署に成長し、KYCやアンチマネーロンダリング(AML)、レギュラトリーマネジメントやビジネスアドバイザリーなど、下に複数のサブセクションや専門分野ができました。

現在、世界の主要な金融センターにおいては証券会社・投資銀行の採用は右肩下がりで、特に自動化や外部委託が進んでいる部門(フロントオフィスやオペレーション)ではその傾向が顕著ですが、コンプライアンスのようなコントロール系の部署は、厳しい規制環境のおかげもあり成長部門として位置付けることができます。

3. コンプライアンスにおけるキャリアの安定性

現状、コンプライアンス業務が無用になるほど(つまりリストラが断行されるほど)当局が金融機関に対する締め付けを緩める気配はありません。ドッドフランクのような既存の規制が改正されたとしても、コンプライアンスが縮小することはないでしょう。これは私たちの住む世界ではかつてないほどたくさんの国が参加し互いに影響を与え合っており、様々な規制や合意、政策が常に進化しながら政府や会社を網の目のように結びつけているからでしょう。例えばトランプ政権は(EU当局とは逆に)金融危機以後の金融規制の撤廃を提唱していますが、これは世界の金融市場に少なからぬ不安を呼び起こしています。もし実現すれば、各金融機関のコンプライアンス部門では今以上に複雑で、難しい対応を迫られることになることは想像に難くありません。。

ミスを犯して罰金を科せられないよう金融各社は細心の注意を払わなければならず、そのためには包括的なコンプライアンスの枠組みが必要になるわけです。

もちろん、今後重要性が薄れる可能性がある職種もないわけではありません。例えばKYC/AMLにおけるFenergoやトレードサーベイランスのSMARTなど、システムや社員のモニタリングをする業務は影響を受けるかもしれません。優れたソフトウェアなら人間よりも速く、効率的に大量のデータをスキャンし、その中からパターンを見つけることができます。しかしながら、倫理上の整合性(例えばあるトレーダーが同僚に何と言ったか、など)をチェックするのは、コンピューターよりも人間が向いているでしょう。コンプライアンスやリスクにおいて生じる多くの課題には最終的に人間の関与が求められると思います。銀行や年金基金、保険会社のように、金融市場全体に波及するシステミックリスクを孕む金融機関において、防衛を完全に機械任せにすることを当局が容認するとは考えにくいからです。

あわせてこちらの記事もお読み下さい

「人工知能で仕事はどう変わる?」

 

ここまで金融におけるコンプライアンスの概要をお話ししました。後編では、コンプライアンスの進化や、コンプライアンスに向いている性格、必要なスキルなどについて解説します。乞うご期待!
コンプライアンスについての質問やご意見もお待ちしております。

Duncan Glibert's picture
シニアコンサルタント | 銀行&金融 紹介部門
dgilbert@morganmckinley.com

最新の 求人

スピード感のある外資らしいティア1証券。フレックスタイム制あり。
東京03.12.2019
大手外資証券。フレックスタイム制あり。英語の読み書きがある程度できればOK!
東京03.12.2019
一流外資証券会社。スピード感のある外資らしい職場です。金融経験必須。
東京03.12.2019