バーゼルIII が銀行に与える影響

バーゼルⅢには、2008年-2009年の世界的な金融危機を教訓に、仮に銀行が経営危機に陥っても、返済不要の普通株などによる資金を十分に保有していれば、損失を穴埋めでき危機を回避できるという考え方が根底にあります。しかし90年代後半の金融危機の結果として生まれた預金保険法によって、銀行が資本注入を受けることで倒産を免れ、債権者も守られるようになり、日本の銀行倒産のリスクは減少したと言われます。

この法律は銀行が破綻しないよう資本注入を受けることで、債権者が損を被る可能性を効果的に低くしています。日本と他国の大きな違いは、銀行をはじめ金融機関全体を支えるため、経営危機に対処する体制があり、この予防線によって特にビッグ3と呼ばれるメガバンクについては、倒産しないと言われていることです。しかし投資家に損害を与えない公的資金投入は、2008年のリーマンショック後のような、税金投入による救済を繰り返さないことを目指すバーゼルⅢの精神に反しています。どういう場合でもメガバンクは救済される、つまり「潰すには大きすぎる銀行」に、モラルハザードが起きるのでは、と指摘する声もあります。これはまさにバーゼルⅢが排除したいことでしょう。

人々は、税金で銀行を下支えすることの妥当性に疑問を持つでしょうが、過去の資本注入が日本の金融システムを安定させたと言う意見もあります。我々は、倒産を待って対処するより早い段階で資金を投入した方が、結果として社会全体のコストは少なくて済むという経験もしました。バブル経済以降、日本政府は多くの金融機関を救済し、国は預金保険機構を通して、計47.1兆円(4,630億米ドル)を投入しました。ビッグ3も資本再構成のための公的資金を受け取りましたが、2006年度末までに返済しています。

日本がバーゼルⅢに参加する一方で、銀行は、預金保険法によって、監督官庁が何度も劣後債権者に損失を負わせているヨーロッパのバーゼルⅢ導入国の債券より、日本のメガバンクの証券資本が低リスクであることを意味すると考えています。投資家も同様に考えるとしたら、日本の銀行が海外で低コストで規制に必要な自己資本を充当する機会を得ることになるでしょう。また、このようなアプローチは、投資家や格付会社が、政府に引き続き法的規制なしの金融システム支援を期待している中国やインドといったアジアの国有銀行と、日本の主要銀行を同格にするでしょう。

バーゼルⅢについて、どう思われますか?

<バーゼルⅢとは>
主要国の金融監督当局で構成するバーゼル銀行監督委員会が2010年9月に公表した、国際的に業務を展開する銀行の健全性を維持するための新たな自己資本規制。銀行の自己資本比率に関する「バーゼル合意(BIS規制)」(1998年)、BIS規制の内容を見直し金融機関のリスクをより反映させた「バーゼル2(新BIS規制)」(2004年)に次ぐ新たな規制強化策である。

バーゼルⅢは、国際的業務展開する銀行の“自己資本の質と量の見直し”が柱で、普通株と内部留保などからなる「中核的自己資本(Tier1)」を、投資や融資による損失の恐れがある「リスク資産」に対して、一定割合以上持つように義務づけている。具体的には、業績悪化時に配当を減らせる普通株と、過去の利益の蓄積である内部留保が主体の「中核的自己資本(Tier1)」の比率を、実質7.0%以上とすることが求められている。2012年末から段階的に導入が始まり、2019年から全面的に適用される予定。

Lionel Kaidatzis's picture
マネジング ディレクター
lionel@morganmckinley.co.jp