[インタビュー] 野村證券GMトレーディング&セールス・オペレーション部長・服部香氏

進化する証券会社のオペレーション―成功に必要なものとは?

Morgan McKinleyは2014年に野村證券でオペレーションのシニアマネージャーを務める服部香氏にインタビューをお願いしました。最近この記事を読み返してびっくりしたことは、5年前と状況がほとんど変わっていないことです。各社のオペレーション・マネージャーは今も同じ課題と向き合っており、今後の証券オペレーションの方向性もまだ定まりません。フロントオフィスやクライアントの要件を容れつつ、経費も節減しなければいけないオペレーションのマネージャーにとって、先端技術の導入や外部企業・海外オフィスへの業務移管は非常に難しい問題です。一つだけはっきりしていることは、ビジネスに付加価値をもたらすことができ、クライアントを支援し、かつ刻々と変化する金融規制やIT環境に対応できるオペレーション人材は今も非常に需要が高いということです。

インタビューの全文は以下をご覧ください。

2008年のリーマンショック以降、証券会社のオペレーションは、劇的に変わりました。すべての金融機関はコスト削減と効率化のため、バックオフィスの海外移転という戦略を取りました。グローバルマーケットで競争に勝てるよう、システムとプロセスを進化させ、オペレーションを効率化しました。すべてのバックオフィススタッフの間で「プロジェクト」という単語が普通に交わされ、ここ数年バックオフィスで「プロジェクト」に関わらなかった人は、ほとんどいないでしょう。

Morgan McKinleyは、野村證券GMトレーディング&セールス・オペレーション部長・服部香氏に、この件について伺いました。服部氏の部署では、ほぼ間違いなく日本のオペレーション部門で最大の組織変更を断行中です。野村證券ではリーマン引継ぎ以降に、決済・ミドルオフィスのシステムのアップグレードと、店頭デリバティブ取引システムをロンドンから日本へ移管したことによって、服部氏のスタッフも、継続的な改革を経験しています。弊社は、オペレーションスタッフが現在も今後も直面するであろう、こうした組織変更に関する服部氏のお考えをお聞きし、また昨今の激動の環境下で、変化の先を行き、成功するために必要な事について伺いました。

野村ファイナンシャル・プロダクツ・サービシズ株式会社(NFPS)は、日本を拠点とする新会社の名称で、全世界の店頭デリバティブ取引を担当します。この部門は以前、英国で業務を行っていましたが、野村證券は昨今の環境を考慮し、当機能を日本に戻し、完全に日本の金融庁の監督下に置きました。服部氏は「システムはすべて既にロンドンにあるので一見、移行は簡単に思えますが、現実にはシステム移転にまつわる、あらゆるオペレーションリスクを管理しなければならず非常に複雑です。プロジェクトは2011年の新会社設立から始まり、日本の金融庁の要求を満たすコンプライアンス対応、リスク管理部門による長期的なリスク管理、経理部門による新しい会計基準への対応等、全部門が深く関わりました。前述の全業務に携わり、システムやインフラに責任のあるオペレーション部門は、最も深く関与したと言えます。そして、新会社は来年始動する準備ができました。」と語っています。

NFPSを中心とするプロジェクトに加え、服部氏の部門では新しい決済・ミドルオフィスシステムを開発中です。服部氏によると「全部門が変更・移行の過程にあります。2009年リーマン引継ぎ以降、NFPSのスタートとシステムのアップグレードがあり、ここ数年は非常に忙しい状態でした。」とのことです。これは日本でも海外でも、金融機関のオペレーション部門で働く、すべての人達の意見でしょう。

- ここまでで何が一番大変でしたか?
最大の課題は、圧倒的にリスク管理と社内統制です。そもそも店頭デリバティブは非常に複雑です。償還期間は通常30年で、次々に新商品が生まれています。優れた顧客サービスを提供するためには、取引、現金決済、顧客サービスのそれぞれに、認識すべき短期的・長期的リスクがあります。こうしたリスクは統制力やシステムが未熟だと把握できないため、システムのアップグレードと取引システムの海外移設においては、リスクについては、さらに慎重になるべきです。更に法改正による挑戦的な環境でもありました。国際的な店頭取引システムでは、欧州主導の法律を遵守していましたが、今後は日本の法律に沿った専門的な項目を組み込む必要がでてきました。オペレーションスタッフは、日常的に金融庁とやりとりし、新システムとインフラが法律に則っているか、統制が十分であるかを確認しなければなりません。

- 変革の実施を踏まえて、成功するには何をすべきでしょうか?
オペレーションスタッフは、もはや毎日9時-5時で数字の入力をして残りをコンピュータに任せる”処理係”ではありません。オペレーションを成功させ進化させるには、常に”全体像”を考えなければなりません。自分の担当業務がチームに果たす役割は何か、チームが部門に果たす役割は何か、部門が会社に果たす役割とは何か。自分のチーム・部署では何を達成しようとしているのか。目標達成のために、より速く且つ低リスクの手段があるのか。部門・チームそして自分自身が会社に与える付加価値とは何か。これらはオペレーションスタッフが常に自問すべきことです。さらにリスクに敏感で、統制思考であるべきです。こうした変化を考えると、私達はリスクを軽減させるために、システムだけに頼ることはできません。商品、規制、インフラの変化を意識する必要があります。私達は短期・長期的にどんなリスクがあるかを気に留めるべきす。

- オペレーション部門に入るジュニアスタッフに向けて、アドバイスをお願いします。
「早いうちに責任を持ったほうがいいでしょう。将来、スタッフを監督・管理することを想定し、できる限りプロジェクトに加わってください。社内のビジネスパートナーや、金融庁、顧客といった部門外と接する仕事を探してください。効率性の改善、付加価値を生む方法を考えましょう。店頭デリバティブの経験を積みましょう。こうした商品は本質的に複雑で、変化に素早く対応できるダイナミックな人が求められます。また日本では、店頭デリバティブオペレーションの知識と経験に隔たりがあり、この手の商品がますます取引されている中で、こうしたスキルは大変重宝されます。

日本でのオペレーション経験がある方、または記事の内容に関するご意見・ご感想のある方は、是非お気軽にお問い合わせください。

Steven Howden's picture
マネージャー | 銀行&金融 紹介部門
showden@morganmckinley.co.jp

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