2019年 給与ガイド

モーガンマッキンリー2019年版給与ガイドは独自の調査を基に 弊社の取り扱う業界・職種における給与データをまとめたものです。 金融サービス、アセットマネジメント、経理・財務、人事 IT、及びセールス&マーケティングにおける採用市場動向と共にご覧いただけます。

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2019年 給与ガイド

2018年の転職市場を振り返ると、ほぼすべての業種で活況が続いた印象です。求人数は前年比で11.5%増加しました(当社調べ)。かねてより候補者不足が叫ばれていましたが、このような市場環境では求人数が少しでも増えると、優秀な人材を確保するため企業間の競争が激化することになります。

興味深いことに、求人数の増加には比例せず2018年の転職希望数は前年比で14%減少しました。これは企業が人材の流出を防ぐために積極的な対策を講じ始めていることと無縁ではないでしょう。当社が年末に実施した職場・給与・雇用に関するアンケート(以下、雇用動向調査)では、2018年に給与が増加した回答者は全体の53%、会社の裁量により決定する業績連動型の賞与を受け取った回答者は66%に上りました。年収増が離職率の低減に効果的であることは言うまでもありませんが、それ以外にも昇級やキャリア成長の機会を設けたり、優秀な社員の評価・表彰の仕組みを見直したりと、多くの企業が取り組みを強化しています。

企業の採用担当者に理想の候補者の採用に失敗した原因を聞いたところ、上位の回答は

  • 選考プロセスに時間がかかり優秀な候補者を逃した
  • 給与面で候補者の希望に応えられなかった
  • 競合と差別化を図ることができなかった

という結果となりました。

人手不足が深刻な市場においては候補者が複数社から内定を獲得することは珍しくありません。年収はもちろん重要ですが、2018年は採用の意思決定をスピーディーに行えなかったために欲しい人材を逃すケースが多く見られました。実際、前出の雇用動向調査に回答した採用担当者のうち45%が、自社の採用プロセス改善は過去2年間で停滞しているか、進んでいないと答えています。

ダイバーシティの実現も、引き続き多くの企業が頭を悩ませている課題です。当社の調査に回答した企業のうち、採用に関するダイバーシティ戦略を策定している会社は半数程度に留まりました。そうした企業においてさえ、女性管理職の登用などジェンダーバランスの是正は難航しています。他方、候補者不足もあり2018年は外国籍人材の採用が大きく前進しました。ほとんどが日本語スキルがビジネスレベル以上のプロフェッショナルだったということを追記しておきます。

2018年の日本の労働市場を表すキーワードを選ぶとすれば、間違いなく人工知能(AI)と自動化でしょう。また、多くの企業が働き方改革に本格的に取り組んだ一年でもありました。

ロボティクス・人工知能・自動化と転職市場への影響

2018年、世間はAIの話題で持ちきりでした。企業側では効率改善やコスト削減、利益の拡大に期待する声が高まっています。一方労働者側ではAI導入によるキャリアへの影響が最大の関心事です。単純作業からの解放を待ち望む楽観論から将来の雇用を絶望視するニヒリズムまで、実に様々な見解が聞こえてきます。

しかし議論の盛り上りの割に、AIが2018年の採用市場に及ぼした影響は限定的でした。自動化プロセスやシステムの導入には時間がかかり、様々なテストやシステム統合処理を人間が行う必要があります。このため、AIの登場によって通常業務から導入に関わるプロジェクト業務に職責の中心が移ったプロフェッショナルもいます。しかしながらルーチンワークの衰退は今に始まった動きではありません。以前より、企業が社内で行う必要がない業務を外部委託したり維持費が安い海外に移管したりする中で、日本国内にいる社員は収益部門への助言など会社にとって付加価値が高い仕事に携わることを求められています。このようにして見ると、AIや自動化が転職市場に及ぼす影響というのは多くの人にとっては時代の大きな流れの一部に過ぎないのではないでしょうか。2019年も各業界でAIや自動化技術の導入が進むと予想されます。今後転職を検討する方は所属部署にプラスアルファの貢献ができ、(特に管理部門では)ビジネスパートナーとして収益部門を支えられるプロフェッショナルを目指してスキルを磨くことをおすすめします。

働き方改革の現状

働き方改革も2018年注目を集めたテーマでした。過労死などの悲しい事件が世論を後押しし、2018年6月に働き方改革関連法案が国会で可決されました。2019年の施行時に適用を受けるのは大企業のみで、中小企業には猶予期間が設けられています。この一連の法律のひとつの大きな目的は労働時間の制限です。労働者の時間外労働は年間720時間まで、単月では100時間未満に制限されます。しかし専門性が高い業務に従事する多くの労働者(恐らくは、このレポートの読者の大多数)は同時に創設される高度プロフェッショナル制度により、この規制の対象外となります。法案成立の陰では日本の労働慣行の打破を目指して多くの方が奔走されたことでしょう。また実際の運用が進むまではその真の効果はわからないのも事実です。それでも今回の法整備が不十分で、改革と呼ぶにはあまりに小さな一歩だという批判も見逃せません。

2019 Salary Guide

幸い、多くの企業は時代に合った勤務制度をつくり、人材の流出を防ぐために自主的に「働き方改革」を加速させています。こうした企業側の多大な努力にも関わらず、11月の雇用動向調査では回答者の80%が時間外労働をしていることがわかりました。このうち、1週間の残業時間が10時間以上であると回答した人の割合は66%でした。また回答者の半数以上が、私のワークライフバランスは、「私生活より仕事に偏っている」もしくは「改善される必要がある」と答えています。更に心配なのは、会社に積極的に貢献したいと感じている(「エンゲージメント」が高い)回答者が全体の半数以下(48%)だったことです。日本は労働時間が長い国として国際的にも知られていますが、せっかく新しい制度が導入されても従業員の活用度が低いという実態があります。多くの場合、上司や同僚の目が気になり活用しづらいという心理が働いているようです。

興味深いことに、企業側に「社員があなたの会社で働き続ける理由で最も大きなものは何か」と尋ねたところ、大半(73%)がワークライフバランスの充実を挙げています。私たちから企業の皆様へのアドバイスは、推進中のイニシアチブがあればその浸透を徹底すべきだということです。企業はシニアスタッフ(マネージャーや上位者)が柔軟な働き方を自ら実践するように促し、他の社員が新しい勤務制度を利用しやすい環境を作るなどの工夫をする必要があります。

終わりに

英国のEU離脱や米中の貿易摩擦の行く末が案じられる中、採用計画を縮小する企業があるのではと考える方も多いでしょう。しかし2019年の求人市場の滑り出しは堅調です。企業が新しい年の採用計画を練り上げる1-3月期は通常閑散期にあたることを考慮すると幸先の良いスタートと言えます。雇用動向調査でも採用企業の87%までが直近の6か月で採用需要は変わっていない、又は拡大している、と回答しており、採用に前向きな姿勢が感じられました。

現在安倍政権が推し進める消費税増税が採用市場に波紋を広げる可能性は否定できません。経済への影響を懸念してこれまで二度延期されていますが、2019年はいよいよ増税が実行される見込みです。しかし日本には9月・10月のラグビーワールドカップ開催という明るいニュースもあります。2020年五輪の「予行演習」とも言われているイベントで、観客のおよそ4割が海外から来ると予想されています。オリンピックの機運が高まる中、日本経済活性化の弾みとなることは間違いないでしょう。

モーガンマッキンリーの2019年給与ガイドは、2018年における当社独自のデータと年間を通しての採用動向、及び2018年11月に600名を対象に実施した調査結果を基に作成しています。